タグ:新規公開作品

  • 水上 滝太郎:果樹

    2019-12-06公開  入力:酒井裕二, 校正:noriko saito  (16k/45k)  “相原新吉夫婦が玉窓寺の離家を借りて入ったのは九月の末だった。残暑の酷しい年で、寺の境内は汗をかいたように、昼日中、いまだに油蝉の声を聞いた。 ふたりは、それまでは飯倉の烟草屋の二階に、一緒になって間もなくの、あんまり親しくするのも羞しいような他人行儀の失せ切れない心持でくらしていた。ひとの家の室借をしていると、何かにつけて心づかいが多く、そのために夫婦の間に夫は妻に対し、妻は夫に対して、あたりまえ…
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  • 野村 胡堂:銭形平次捕物控 141 二枚の小判

    2019-12-05公開  入力:特定非営利活動法人はるかぜ, 校正:結城宏  (14k/39k)  “一 「親分の前だが――」 ガラッ八の八五郎は、何やらニヤニヤとしております。 「前だか後ろだか知らないが、人の顔を見て、思い出し笑いをするのは罪が深いぜ。何をいったい思い詰めたんだ」 銭形の平次は相変らずこんな調子でした。年を取っても貧乏しても気の若さと洒落っ気には何の変りもありません。 「ね、親分の前だが、褒美を貰ったら何に費おうか、あっしはそれを考えているんで」 「褒美?」 「忘れちゃいけませ…
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  • 笠 信太郎:乳と蜜の流れる地

    2019-12-04公開  入力:砂場清隆, 校正:芝裕久  (5k/10k)  “私は、晴れた日の青い海を見ると、なんとなく食慾をそそられるような思いがする。これは今に始まったことではないが、どうしてそうなんだろうと考えてみると、それはサカナ屋の店先などを通るときに、鯖や鮪や鰯などが、水をぶっかけられて青い背中をいきいきと光らせているのを見て、あれはいかにもうまそうだと自分の眼を光らせるその瞬間、その青い色が、どうやら深海の色で染まってきたのではないかというような錯覚をもつことが…”…
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  • 伊庭 心猿:来訪者のモデル

    2019-12-03公開  入力:H.YAM, 校正:きりんの手紙  (3k/6k)  “御成道のうさぎや主人、谷口喜作さんから「先生はいまタカちやんと君のことを書いてゐるさうですよ」と知らされたのは、まだ空襲もさう激しくならない、たしか昭和十八年の春頃だつたと覺えてゐる。 タカちやんといふのは、即ち永井荷風氏の近業「來訪者」の登場人物白井巍君のことで、當時房州保田に住んでゐたので、自ら房陽山人と號し、終戰後發表された先生の日記の中に、南總外史として現はれる人物である。 あの小説を讀めば…”…
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  • 永井 荷風:来訪者

    2019-12-03公開  入力:H.YAM, 校正:きりんの手紙  (40k/92k)  “一 わたくしはその頃身辺に起つた一小事件のために、小説の述作に絶望して暫くは机に向ふ気にもなり得なかつたことがある。 小説は主として描写するに人物を以てするものである。人物を描写するにはまづ其人物の性格と、それに基いた人物の生活とを観察しなければならない。観察とは人を見る眼力である。然るにわたくしは身辺に起つた一瑣事によつて、全然人を見る眼力のないことを知り、これでは、到底人物を活躍させるやうな小説…”…
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  • 青木 正児:九年母

    2019-12-02公開  入力:砂場清隆, 校正:芝裕久  (4k/9k)  “明治二十五年の春、私は赤間関(今の下関)文関尋常小学校に入学した。たしか二年の修身の教科書に「九年母」という話が載っていた。田舎の子供が母から九年母を親戚に贈る使いを言いつけられて、途中風呂敷包を開けてみると九個ある、一個食べておいて、「八年母を差し上げます」と差し出したという話。私はなぜかその話が面白くて、今でもその挿図の子供の姿が眼に残っている。私は九年母が好きであった。味よりもあの香気が好きだ…”…
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  • 三好 達治:寒林小唱

    2019-12-01公開  入力:kompass, 校正:杉浦鳥見  (2k/5k)  “山雀の嘴をたたきし板びさし はたやくだりし黄なる枯芝 裸木の朴のこずゑはゆれてあれ その青空をとぶ雲もなし 鴉なく櫟ばやしのあらきみち けうとかりけり陽はてれれども さねさし相模の山よ來る小鳥 たかき空よりまひくだりけり はらはらと空よりくだる小鳥あり やがてかしこにしばなきにけり この庭は鶲のとりの一羽きて あそぶ庭なりひるをひねもす 宵ながら怠りてふすかり臥しの 山のしじまのきはまりもなし むら…”…
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  • 三好 達治:秋日口占

    2019-12-01公開  入力:kompass, 校正:杉浦鳥見  (2k/3k)  “われながく憂ひに栖みて はやく身は老いんとすらん ふたつなきいのちをかくて 愚かにもうしなひつるよ 秋の日の高きにたちて こしかたをおもへばかなし すぎし日の憂ひならねば あまからぬこの歎きかな 見よ彼方 日は眞晝 藍ふかき海のはるかに 眞白なる鴎どりはも 一羽ゐてなに思ふらん 波の穗にうかびただよふ 願はくばわが老いらくの 日もかかれ 世の外にして つたなかる心ひとつを いだきつつわが來し旅の ゆ…”…
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  • 国枝 史郎:探偵文壇鳥瞰

    2019-11-30公開  入力:門田裕志, 校正:hitsuji  (7k/17k)  “一 創作探偵小説は本年度に至って活気を呈し、読物文芸的大方の雑誌は競って夫れを載せたようです。「新青年」や「探偵文芸」や、乃至は「探偵趣味」などは、それの専門の雑誌だけに、創作探偵小説を、満載したのは当然としても「苦楽」「現代」「サンデー毎日」「大衆文芸」「講談倶楽部」これらの雑誌が多くの頁を、そのために裂いたということは、可成り目立った傾向でした。さて又一方著書の方から言えば、「創作探偵小説選集」…”…
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  • 国枝 史郎:広東葱

    2019-11-30公開  入力:門田裕志, 校正:阿和泉拓  (9k/24k)  “一 夕飯の時刻になったので新井君と自分とは家を出た。そして自分の行きつけの――と云っても二三回行っただけの――黄華軒という支那料理店へ夕飯を食いに這入って行った。 「日本人は一人も居ないんだね」 新井君は不意にこう云ったが、自分にはその意味が解らなかった。 「日本人が一人も居ないとは?」 「料理人もボーイも支那人だね……屹度主人も支那人だろう」 「何故?」と自分は訊き返えした。 「特別に料理が旨いか…”…
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