タグ:青空文庫

  • 中 勘助:結婚

    2018-05-22公開  入力:岡村和彦, 校正:館野浩美  (8k/16k)  “姉の死と同時に私のところの家庭はもう久しく予期された行きづまりに到著した。残されたのは頭が悪くてもののいえない七十をこした兄と六十に手のとどく私、どうにもならない。病中は私が主婦の代役をし、お見舞にきて下さる親戚やお知合いの婦人の好意に頼って凌いできたもののそれは余儀ない窮余の窮策で、いつまでも続くものでなく、続けるべきものでもない。で、私は考えてたことを実行することにした。結婚。私は誰彼に候補者の…”…
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  • 中 勘助:母の死

    2018-05-22公開  入力:呑天, 校正:小山優子  (9k/22k)  “これらの断片は昭和九年九月の初旬母が重態に陥ったときから十月の初旬その最後のときまでのあいだに書かれたものである。  断片。この愛別離苦のうちから私が人人におくる贈り物は「律法を妄りに人情の自然のうえにおくな」という忠告である。私どもは世の親と子があるように、はたあるべきようにお互に心から愛しあっていながら、すくなくとも私のほうではよくそれを承知していながら真にうち解けて馴れ親しむことができず、いつ…”…
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  • 小川 未明:少年の日二景

    2018-05-21公開  入力:特定非営利活動法人はるかぜ, 校正:酒井裕二  (6k/37k)  “おどろき 池の中には、黄色なすいれんが咲いていました。金魚の赤い姿が、水の上に浮いたりまるい葉蔭に隠れたりしていました。そして、池のあたりには、しだが茂り、ところどころ石などが置いてありました。 勇ちゃんは、いかにも金魚たちが楽しそうに遊んでいるのをぼんやりながめていました。そのとき、やぶの方から垣根をくぐって、黒い一筋の糸のように、なにか走ってきたので、その方を見ると、大きなへびが、一ぴきのかえ…
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  • 小川 未明:はたらく二少年

    2018-05-21公開  入力:特定非営利活動法人はるかぜ, 校正:酒井裕二  (6k/29k)  “新しい道が、つくりかけられていました。おかをくずし、林をきりひらき、町の中を通って、その先は、はるかかなたの、すみわたる空の中へのびています。そこには、おおぜいの労働者が、はたらいていました。 トロッコが、ほそいレールの上を走りました。道ばたには、大きな土管がころがり、くだいた石や、小じゃりなどが、うずたかくつまれていました。 はたらくものの中には、年をとったものもいれば、まだわかいものもいました…
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  • 丘 浅次郎:自然界の虚偽

    2018-05-20公開  入力:矢野重藤, 校正:y-star  (14k/17k)  “天真爛漫ともいい、「天に偽りはなきものを」ともいうて、天には偽りはないものと、すでに相場が定まっているようであるが、その天の字を冠らせた天然界はいかにと見渡すと、ここには詐欺、偽りはきわめて平常のことで数限りなく行なわれている。そのもっともいちじるしい例は小学校用の読本にもでているゆえ、普通教育を受けた者なら誰も知っているであろう。 動物には自身を他物に似せて敵の攻撃をのがれるものがいくらもある。南…”…
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  • 丘 浅次郎:動物の私有財産

    2018-05-20公開  入力:矢野重藤, 校正:y-star  (12k/30k)  “人間社会では財産はきわめて大切なもので、ほとんど生命に次いで貴重なものというてよろしい。財産のない者はささいなことさえも容易にはできぬが、財産のある者は勝手次第なことをなして毫もはばからない。ドイツ語で財産のことを Verm※gen(なし得る)と名づけるのは全くこのゆえであろう。試みに Ein Mann ohne Verm※gen(財産なき男)と書けば「なし得るなき男」とも翻訳することができるが、か…”…
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  • 中原 中也:我が生活

    2018-05-19公開  入力:村松洋一, 校正:noriko saito  (4k/9k)  “明治座に吉右衛門の勧進帳が掛かつてゐる、連日満員である――と電車の中で隣り客の話してゐるのを聞いて、なんとなく観に行きたくなつたのであつた。観れば何時もながら面白く感ずるのだが、観るまでは大変憶怯で、結局一年に一度か二度しか歌舞伎を覗くことはないのが私のこれまでである。「観たいな……観よう!」と、電車が濠端を走つてゐる時思ひ定めた、「でもまた観ないでしまふんだらうな」とそのすぐあとでは思ふのだつた。….
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  • 中原 中也:青年青木三造

    2018-05-19公開  入力:村松洋一, 校正:noriko saito  (4k/7k)  “一 三造の心事――三造の友人達に。 三造は、この世に自分くらゐ切ないがまた、呑気といへば呑気な男はないと思つてゐた。事実彼は呑気であつた。 或時三造の一寸知つた男が彼に言つた。「無念さうな顔をしてかァ」。実際さういはれてみれば自分は無念さうな顔をしてゐたもんだと三造は思つた。「でも、自分の心の中は、無念さうなのではないのだがなあ。しかし……」。三造はドギマギした。それからまた放心したやうな眼をした。….
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  • 松崎 天民:友人一家の死

    2018-05-18公開  入力:門田裕志, 校正:noriko saito  (9k/25k)  “○ K君――――。 物価暴騰の声に、脅やかされているばかりが能ではない。時には遊びの気分に浸って、現実の生活苦を忘れようではないか。――僕達はこうした主旨から、大正八年七月川開きの夜を、向島の百花園で、怪談会に興じた。 泉鏡花氏、喜多村緑郎氏の他、発起人として尽力したのは、平山蘆江氏や三宅孤軒氏などであった。七夕祭の夜、喜多の家の茶荘に招かれた時、平山君や僕から言い出した催しとて、趣向の事や人の寄り…
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  • 海野 十三:江戸推理川柳抄

    2018-05-17公開  入力:フクポー, 校正:高瀬竜一  (3k/7k)  “推理川柳とは、私が仮りにつけた名称であって、推理を含んだ川柳という意味である。 雷も雀がなけばしまいなり  この句の味い方を、推理川柳の立場からしてみると、「雷があばれているうちに、雀が鳴きはじめると、もう雷鳴はおしまいになると推理してよろし」というわけ。この法則は、雷嫌いの多かった江戸時代の人々にたいへん重宝がられたことであろう。「あッ、雀が鳴きだした。もう雷さまは行ってしまうぞ。やれやれ」と、蚊…”…
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