カテゴリー:青空文庫

  • 島崎 藤村:死の床

    2018-08-22公開  入力:林幸雄, 校正:岩尾葵  (5k/17k)  “「柿田さん、なんでもかんでも貴方に被入しつて頂くやうに、私が行つて院長さんに御願ひして来て進げる――左様言つて、引受けて来たんですよ。」 流行の服装をした女の裁縫師が、あの私立病院の応接間で、日頃好きな看護婦の手を執らないばかりにして言つた。 柿田は若い看護婦らしい手を揉み乍ら、 「多分行かれませう。丁度今、私も手が空いたばかし……先刻貴方から電話を掛けて下すつた時院長さんにも伺つて見たんです。病院…”…
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  • 山本 周五郎:赤ひげ診療譚 03 むじな長屋

    2018-08-21公開  入力:特定非営利活動法人はるかぜ, 校正:北川松生  (26k/71k)  “一 梅雨にはいる少しまえ、保本登は自分から医員用の上衣を着るようになった。薄鼠色に染めた木綿の筒袖と、たっつけに似たその袴とは、よく糊がきいてごわごわしており、初めて着たときには、人にじろじろ見られるようでかなり気まりが悪かった。 新出去定と森半太夫は黙っていたし、彼が上衣を着はじめたということにさえ、気づかないふりをしていた。他の医員たちも口ではなにも云わなかったが、彼を見るたびに皮肉な眼つき…
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  • 中原 中也:夏 〔私が貧乏で〕

    2018-08-20公開  入力:shiro, 校正:館野浩美  (3k/6k)  “私が貧乏で、旅行としいへば殆んど夏にしかしないからかも知れない、………夏と聞くと旅愁が湧いて来て、却々「夏は四季のうち、自然の最も旺んなる時なり」どころではない、なんだか哀れにも懐しいといつた風で、扨この夏はどうしようかなと思ふと、忽ちに嘗て旅した何処かの、暑い暑い風景が浮んで来て、おもへば遠く来つるかなと、そいつた気持に胸はふくらむで来るのである。 ゆらりゆらりと、柳が揺れてゐる、時々校庭を通り過…”…
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  • 中原 中也:夏の夜の話

    2018-08-20公開  入力:村松洋一, 校正:noriko saito  (3k/7k)  “夏も半ばを過ぎてゐた。此処は銀座の裏通りのカフェー、卓子の上で扇風器は、哀しげな唸りをつづけてゐる。 三田村は私の前でさかんに飲んでゐる。その兎のやうな眼を赤くして、折々キヨロキヨロあたりを見廻す。女給達は、今来たばかりの常連らしいひどく冗談口を叩く男のまはりにみんな行つてしまつた。スタンドにゐるお内儀さんは、時々怪訝さうな眼付をその方にやつてゐる。 先刻まで頻りに喋舌つてゐた三田村はスツカリ黙つて….
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  • 野村 胡堂:銭形平次捕物控 040 大村兵庫の眼玉

    2018-08-19公開  入力:特定非営利活動法人はるかぜ, 校正:結城宏  (17k/46k)  “一 「八、花は散り際って言うが、人出の少なくなった向島を、花吹雪を浴びて歩くのも悪くねえな」 銭形平次はいかにも好い心持そうでした。 「悪いとは言いませんがね、親分」 「何だ、文句があるのかえ」 「こう、金龍山の鐘が陰に籠ってボーンと鳴ると、五臓六腑へ沁み渡りますぜ」 「怪談噺てえ道具立じゃないよ。見や、もう月が出るじゃないか」 「へッ、へッ、真っ直ぐに申上げると、腹が減ったんで」 ガラッ八の八五…
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  • 伊藤 左千夫:牛舎の日記

    2018-08-18公開  入力:高瀬竜一, 校正:岡村和彦  (4k/11k)  “一月十日 午前運動の為め亀井戸までゆき。やや十二時すぐる頃帰て来ると。妻はあわてて予を迎え。今少し前に巡査がきまして牛舎を見廻りました。虎毛が少し涎をたらしていました故鵞口瘡かも知れぬと申して。男共に鼻をとらして口中をよおく見ました。どうも判然はわからぬけれど念のため獣医を呼んで一応見せるがよかろうと申して。今帰ったばかりです どうしましょうと云う。予はすぐ其の足で牛舎へはいって虎毛を見た。異状は少…”…
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  • 島木 健作:生活の探求

    2018-08-17公開  入力:Nana ohbe, 校正:富田晶子  (147k/347k)  “一 今年は春から雨の降ることが少なかつた。 山林を切り開いて作つた煙草畑まで、一町餘りも下の田の中の井戸から、四斗入りのトタンの水槽を背負つて、傾斜七十度の細い畦道を、日に幾度となく往き還りする老父の駒平の姿はいたいたしい。時には握飯を頬張りながら、葉煙草に水をやつてゐるやうな姿を見ることもある。 今年大學にはいつた息子の杉野駿介は、病氣が治り、健康がすつかりもとに返つても、なぜか東京へ歸らうとはし…
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  • 新村 出:『広辞苑』後記

    2018-08-17公開  入力:フクポー, 校正:富田晶子  (6k/10k)  “昭和十年の初頭以来、粒々の辛苦を積んで完成を急ぎつつあった『改訂辞苑』の原稿も組版も、二十年四月二十九日の戦火に跡形もなく焼け失せ、茫然たる編者の手許にはただ一束の校正刷のみが残された。しかも戦火に続く敗戦と戦後の混乱とは、如何に辞典に妄執を抱く編者を以てしても、直ちに復興を企図し得べき底のものではなかった。焦土の余熱は、容易に冷ゆべくもなかったのである。 然るに倖なる哉、同年十二月、当時元気に活躍…”…
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  • 高見 順:仏像とパゴダ

    2018-08-17公開  入力:門田裕志, 校正:noriko saito  (4k/8k)  “たとえば私と一緒にビルマへ行った人が、ビルマの仏像のひどさに就いて書いていた。ビルマは有名な仏教国で仏像が至る所にあるのだが、その至る所にある仏像のひどさ、――児戯に類するという言葉があるがその形容が如何にもぴったりと当て嵌ると思われるその彫刻のひどさ。私たちが日本にあって拝む仏像も皆立派なすぐれたものばかりという訳ではないが、それにしても、私の家の仏壇にある仏像にしても、それは決して彫刻的に立派な….
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  • 山本 周五郎:青べか物語

    2018-08-16公開  入力:富田晶子, 校正:Juki/栗原もなこ  (155k/493k)  “はじめに 浦粕町は根戸川のもっとも下流にある漁師町で、貝と海苔と釣場とで知られていた。町はさして大きくはないが、貝の缶詰工場と、貝殻を焼いて石灰を作る工場と、冬から春にかけて無数にできる海苔干し場と、そして、魚釣りに来る客のための釣舟屋と、ごったくやといわれる小料理屋の多いのが、他の町とは違った性格をみせていた。 町は孤立していた。北は田畑、東は海、西は根戸川、そして南には「沖の百万坪」と呼ばれる…
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