カテゴリー:青空文庫

  • 山本 周五郎:赤ひげ診療譚 01 狂女の話

    2018-06-22公開  入力:特定非営利活動法人はるかぜ, 校正:北川松生  (21k/56k)  “一 その門の前に来たとき、保本登はしばらく立停って、番小屋のほうをぼんやりと眺めていた。宿酔で胸がむかむかし、頭がひどく重かった。 「ここだな」と彼は口の中でつぶやいた、「小石川養生所か」 だが頭の中ではちぐさのことを考えていた。彼の眼は門番小屋を眺めながら、同時にちぐさのおもかげを追っていたのだ。背丈の高い、ゆったりしたからだつきや、全身のやわらかいながれるような線や、眼鼻だちのぱちっとした、…
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  • 森 竹夫:保護職工

    2018-06-21公開  入力:坂本真一, 校正:フクポー  (2k/4k)  “働いているこの機械は家庭用シンガーミシン台ではない旧式な製本の安機械彼女は磨き歯車に油を注す埃をうかべた日光が漸くさぐりあてるくらがりでだまりやさんだまりやさんだけどわたしはお前がじっと何をこらえているのか知ってるの 十六歳未満だから保護職工何てかがやかしい名だ美しい名だ残業はたっぷり四時間活動小屋のはねる頃になって半分眠ったこの保護職工は縄のようなからだで露路から電車道にたどりつく ガスのたまった…”…
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  • 渡久山 水鳴:室内

    2018-06-20公開  入力:坂本真一, 校正:フクポー  (1k/3k)  “垣間見ぬ君が室内 明日来むと云いし其の日に 待てど君姿は見ゑず 我心苛苛しさに 垣間見ぬ君が室内  底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※」国書刊行会 1991(平成3)年6月6日第1刷 底本の親本:「沖縄毎日新聞」 1909(明治42)年5月25日 初出:「沖縄毎日新聞」 1909(明治42)年5月25日 入力:坂本真一 校正:フクポー 2018年5月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは…”…
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  • 渡久山 水鳴:蠅

    2018-06-20公開  入力:坂本真一, 校正:フクポー  (1k/3k)  “真黒なす蠅の一とむれ あざれたる肉あさり 夜昼のけちめもわかず 己が身しかてをもとめぬ、 はづかなる命つがんと。  底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※」国書刊行会 1991(平成3)年6月6日第1刷 底本の親本:「沖縄毎日新聞」 1909(明治42)年5月25日 初出:「沖縄毎日新聞」 1909(明治42)年5月25日 入力:坂本真一 校正:フクポー 2018年5月27日作成 青空文庫作成ファイル:…”…
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  • 太宰 治:春夫と旅行できなかつた話

    2018-06-19公開  入力:夏生ぐみ, 校正:焼野  (2k/3k)  “一社會人として、こゝに一文を草しなければかなはぬ義務を感じてゐる。 佐藤春夫氏と共に晩秋、秋のふるさとを訪づれる約束は、眞實である。實現できず、嘘になつて、ふるさとの一、二の人士の嘲笑の的にされた樣子である。 嘘も、誠も、この世に於ては、力量の問題で、あつさり判決されるものゝ樣である。ばか、と言はれて、その二倍三倍の大聲發して、ばか、と叫び返せば、その大聲の力士あがりの勝ちになるのである。金力、また…”…
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  • 丘 浅次郎:民種改善学の実際価値

    2018-06-18公開  入力:矢野重藤, 校正:y-star  (6k/14k)  “ここに民種改善学というのは、近来西洋諸国で盛んに用いられるEugenicsという字を訳したものである。この字には善種学とか、優良種族学とか、人種改良学とかいう訳語もあるが、私は数年前から、民種改善学という字をあてて、これが最も適当と考えるから、そのまま用いることにした。この学問は有名なチャールス・ダーウィンの従弟にあたるフランシス・ゴルトンの唱え出したところであるが、この人は今より十年前に「法律にも…”…
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  • 丘 浅次郎:進化論と衛生

    2018-06-18公開  入力:矢野重藤, 校正:y-star  (8k/18k)  “進化論と衛生という表題を掲げたが、実は生物進化の一大原因なる自然淘汰と衛生との関係について述べたいとおもう。そもそも進化論とは、今日世の中にある生物は動物でも植物でも決してすべて世界開闢のときから今日のとおりの形に造られ、そのまま少しの変化なしに子孫が残って、今日まで伝わったわけではなく、実は最初はなはだ簡単な構造を有する先祖から分かれ降ったもので、つねに漸々変化し、代を重ねるにしたがい、変化も次第…”…
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  • 太田 健一:脳細胞日記

    2018-06-17公開  入力:ぐうぜんススム, 校正:星野薫  (69k/170k)  “一番ヶ瀬隼人が日記をつけ始めたのは半年前、大学の図書館で何気なく立ち読みしていた古い医学書の中に、二十歳を過ぎると人間の脳細胞は一日十万個ずつ死んでいき、一度死んだ脳細胞は決して再生することがないという恐るべき記述を見出した日からだった。彼はその日アパートに戻って電卓で計算した。自分は今二十一歳と二ヶ月だ。自分の脳細胞が二十歳の誕生日までは百五十億個あったと仮定すると、現在百四十九億五千七百四十万個…”…
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  • 森川 義信:雨の出発

    2018-06-16公開  入力:坂本真一, 校正:フクポー  (1k/3k)  “背中の寒暖計に泪がたまる 影もないドアをすぎて 古びた時間はまだ叩いてゐる あれは樹液の言葉でもない 背中の川を声だけで帰つてゆくものたち  底本:「増補 森川義信詩集」国文社 1991(平成3)年1月10日初版発行 初出:「荒地 2集」 1939(昭和14)年5月 ※初出時の署名は「山川章」です。 入力:坂本真一 校正:フクポー 2018年5月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、イ…”…
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  • 森川 義信:雨の日

    2018-06-16公開  入力:坂本真一, 校正:フクポー  (1k/3k)  “硝子窓から青猫がやつて来てぼくの膝にのる よろよろとまるで一枚の翳のやうなやつだ 背をなでてゐるとぼうぼうと啼き出し ぼくの腹の中までぼうぼうと啼き出し こいつ こいつ ………… だがお前の眼のうるんだ青白い幻燈よ ゆううつな向日葵のやうにくるりくるりと 黒繻子の喪服の似合ふ貴婦人か お前は晩秋のやうにぼくの膝にやつてくる 苦い散薬の重いしめりに 色変へるまで青猫を思索するぼくの若さよ 何年も座つて…”…
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