カテゴリー:青空文庫

  • 小山 清:西隣塾記

    2018-11-15公開  入力:kompass, 校正:酒井裕二  (17k/44k)  “こないだ電車の中で新国劇の「大菩薩峠」上演の広告ビラを見かけた。中里介山居士追善興行としてあった。この芝居の上演も久し振りな気がする。介山居士は戦争中、生れ在所の西多摩郡の羽村で急逝された。あれは何年のことであったろうか。救世軍の秋元巳太郎氏が葬儀委員長をされたという簡単な新聞記事を読んだ記憶がある。逝くなられた月日のことを私は覚えていない。また今年は何回忌に当るのか、それも知らない。 私は嘗て介山…”…
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  • 亀井 勝一郎:家族といふもの

    2018-11-14公開  入力:大久保ゆう, 校正:noriko saito  (4k/8k)  “青年時代に、自我にめざむるにつれて、人は次第に家族から孤立せざるをえないやうになる。自分の友情、恋愛、求道については、両親は必ずしも良き教師ではない。むしろ敵対者としてあらはれる場合が多いであらう。これは家族制度そのものの罪とのみは言へまい。どのやうに自由な家族であつても青年はひとたびは離反するであらう。孤立せんとする精神にとつては、与へられたものはすべて不満足なのだ。これは精神形成の性質から云つて…
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  • スティーブンソン ロバート・ルイス:若い僧侶の話

    2018-11-13公開  入力:門田裕志, 校正:sogo, 翻訳:佐藤 緑葉  (16k/34k)  “サイモン・ロールズ師は倫理學でも名の聞こえた人だつたが、神學の研究でも竝々ならぬ練達の士であつた。彼の「社會的の義務に關する基督教義に就て」と題する論文は、それが出版された當時、牛津大學で相當な評判となつたものであつた。また僧侶や學者の仲間では、若いロールズ氏が教父の權能に關する大著述――それは二折本になるといふ事だつた――を考へてゐるといふ事も一般に知られてゐた。だが之等の學識も、功名心に滿…
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  • スティーブンソン ロバート・ルイス:帽子箱の話

    2018-11-13公開  入力:門田裕志, 校正:sogo, 翻訳:佐藤 緑葉  (23k/52k)  “十六歳まではある私立の學校で、それから後は英吉利がそのために有名になつてゐるある大きな學園の一つで、ハリー・ハートリー氏は、紳士としての普通の教育を受けた。その頃彼はもう勉強が厭でたまらなくなつてゐた樣子だつた。そして彼のたゞ一人の生き殘つてゐる親は、からだも弱く、頭もなかつたので、その後はつまらぬ、上品な遊藝の修業などに暇をつぶしても、別に故障を言ふものもなかつた。それから二年の後に彼は孤兒…
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  • 野村 胡堂:銭形平次捕物控 062 城の絵図面

    2018-11-12公開  入力:特定非営利活動法人はるかぜ, 校正:結城宏  (16k/45k)  “一 「親分、大変な野郎が来ましたぜ」 ガラッ八の八五郎は、拇指で自分の肩越しに指しながら、入口の方へ顎をしゃくってみせます。 「大変な野郎――?」 銭形の平次は、岡っ引には過ぎた物の本に吸い付いて、顔を挙げようともしません。 「二本差が二人――」 「馬鹿野郎、御武家を野郎呼ばわりする奴があるものか、無礼討にされても俺の知ったことじゃないぞ」 「でもね親分、立派な御武家が二人、敷居を舐めるようにして…
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  • ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ:地下生活者の手記

    2018-11-11公開  入力:阿部哲也, 校正:荒木恵一, 翻訳:米川 正夫  (115k/288k)  “第一 地下の世界 この手記の筆者も『手記』そのものもむろん、架空のものである。が、それにもかかわらず、かかる手記の作者のごとき人物は、わが社会全般を形成している諸条件を考慮にとり入れてみると、この社会に存し得るのみならず、むしろ存在するのが当然なくらいである。わたしはきわめて近き過去の時代に属する性格の一つを、普通よりも明瞭に、公衆の面前へ引きだしてみたかったのである。それはいまだに余喘を…
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  • 折口 信夫:三河の山村

    2018-11-10公開  入力:門田裕志, 校正:フクポー  (2k/5k)  “早川(孝太郎)さんが遠慮をして居りますから私が代つて御話申し上げます。早川さんは、御承知の新興大和絵画会の会員でございまして、そのお描きになつた絵が今度の展覧会で、何やら褒美を受けられた相であります。その絵の解説を申し上げたいと思ひます。 三河の山村の雪景色には、他所には見られない特色がある様に思はれます。三河を歩いて居りまして一番心をひかれるのは雪景色、殊に春のはだれの様子には何とも言はれないもの…”…
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  • 折口 信夫:感謝すべき新東京年中行事 ――第四回郷土舞踊と民謡の会・批判――

    2018-11-10公開  入力:門田裕志, 校正:フクポー  (8k/18k)  “大体の感想は、日本青年館での合評会で申し述べたから、其機関雑誌「青年」に載る事と思ふ。其を御参照願へれば結構である。たゞ爰では、熱心な傍観者が、日本国中の手のとゞく限りの民俗芸術を、真の意味に於て自分の実証的態度を鍛錬する気組みで見て歩いた、さういつた態度を離さないで、今度も見せて貰つた其感想を記録して置きたいと思ふのである。 まづ演出に対して日本青年館の此事業に対する毎年の苦労と言ふものは実に感謝…”…
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  • 中原 中也:耕二のこと

    2018-11-09公開  入力:村松洋一, 校正:shiro  (8k/18k)  “一 主家で先刻から、父と母との小言らしい声がしてゐた。時々その声の間から、調子の高い耕二の声が聞えた。 それが聞えなくなつてから間もなくして、その時書斎で読書してゐた耕二の兄は、机の前の障子の中硝子から弟(一字不明)口笛を吹きながら仰向勝に耕二(五字不明)を、みた。 「何処に行くんだい。」 「野球の仕合さ。」 「さうか。」 兄は耕二が野球用の道具を何も持つてゐないので、「如何したんだい」と訊きたい気…”…
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  • 中原 中也:その頃の生活

    2018-11-09公開  入力:村松洋一, 校正:shiro  (13k/30k)  “暑中休暇が、もう終りに近かつた。私は休暇中の自分の予定が、まだ三分の一も出来てゐないことでヂリヂリしてゐた。それに一ヶ月余りといふものを寝て起きて食ふと言ふ全くその文字通りの日暮しのために、いつときも我慢し切れなくなつてゐた。 或日父は近頃にない早く、外来患者も病室の方も済まして、表の間の卓に頬肘を突いた儘、縁先の河鹿の鉢をヂツと瞶めてゐた。私はその父を見ると何か言つて見たくなつた。私は下らない刺戟…”…
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