カテゴリー:青空文庫

  • 丘 浅次郎:自然界の虚偽

    2018-05-20公開  入力:矢野重藤, 校正:y-star  (14k/17k)  “天真爛漫ともいい、「天に偽りはなきものを」ともいうて、天には偽りはないものと、すでに相場が定まっているようであるが、その天の字を冠らせた天然界はいかにと見渡すと、ここには詐欺、偽りはきわめて平常のことで数限りなく行なわれている。そのもっともいちじるしい例は小学校用の読本にもでているゆえ、普通教育を受けた者なら誰も知っているであろう。 動物には自身を他物に似せて敵の攻撃をのがれるものがいくらもある。南…”…
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 中原 中也:我が生活

    2018-05-19公開  入力:村松洋一, 校正:noriko saito  (4k/9k)  “明治座に吉右衛門の勧進帳が掛かつてゐる、連日満員である――と電車の中で隣り客の話してゐるのを聞いて、なんとなく観に行きたくなつたのであつた。観れば何時もながら面白く感ずるのだが、観るまでは大変憶怯で、結局一年に一度か二度しか歌舞伎を覗くことはないのが私のこれまでである。「観たいな……観よう!」と、電車が濠端を走つてゐる時思ひ定めた、「でもまた観ないでしまふんだらうな」とそのすぐあとでは思ふのだつた。….
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 中原 中也:青年青木三造

    2018-05-19公開  入力:村松洋一, 校正:noriko saito  (4k/7k)  “一 三造の心事――三造の友人達に。 三造は、この世に自分くらゐ切ないがまた、呑気といへば呑気な男はないと思つてゐた。事実彼は呑気であつた。 或時三造の一寸知つた男が彼に言つた。「無念さうな顔をしてかァ」。実際さういはれてみれば自分は無念さうな顔をしてゐたもんだと三造は思つた。「でも、自分の心の中は、無念さうなのではないのだがなあ。しかし……」。三造はドギマギした。それからまた放心したやうな眼をした。….
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 松崎 天民:友人一家の死

    2018-05-18公開  入力:門田裕志, 校正:noriko saito  (9k/25k)  “○ K君――――。 物価暴騰の声に、脅やかされているばかりが能ではない。時には遊びの気分に浸って、現実の生活苦を忘れようではないか。――僕達はこうした主旨から、大正八年七月川開きの夜を、向島の百花園で、怪談会に興じた。 泉鏡花氏、喜多村緑郎氏の他、発起人として尽力したのは、平山蘆江氏や三宅孤軒氏などであった。七夕祭の夜、喜多の家の茶荘に招かれた時、平山君や僕から言い出した催しとて、趣向の事や人の寄り…
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 海野 十三:江戸推理川柳抄

    2018-05-17公開  入力:フクポー, 校正:高瀬竜一  (3k/7k)  “推理川柳とは、私が仮りにつけた名称であって、推理を含んだ川柳という意味である。 雷も雀がなけばしまいなり  この句の味い方を、推理川柳の立場からしてみると、「雷があばれているうちに、雀が鳴きはじめると、もう雷鳴はおしまいになると推理してよろし」というわけ。この法則は、雷嫌いの多かった江戸時代の人々にたいへん重宝がられたことであろう。「あッ、雀が鳴きだした。もう雷さまは行ってしまうぞ。やれやれ」と、蚊…”…
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 海野 十三:探偵会話 下駄を探せ ――芝公園 女の殺人事件――

    2018-05-17公開  入力:フクポー, 校正:高瀬竜一  (4k/8k)  “一 「――観音さまの?」 「――ええ、芝公園増上寺の境内に若い女の絞殺体が二つ、放り捨てられていたというんです。ちょっと新聞の記事を読んでみましょうか―― 『十七日(昭和二十一年八月)午前九時半ごろ東京都大森区大森五の一〇三樵夫吉沢新三さん(四 一)が芝公園増上寺境内西向観音裏山で伐材中、付近の笹やぶの北側の大欅の根もとに全裸体俯向けの二十歳ぐらい、死後十日を経過した女の腐らん死体を発見した。愛宕署…”…
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 野村 胡堂:銭形平次捕物控 025 兵糧丸秘聞

    2018-05-16公開  入力:特定非営利活動法人はるかぜ, 校正:結城宏  (19k/58k)  “一 銭形平次もこんな突拍子もない事件に出っくわしたことはありません。相手は十万石の大名、一つ間違うと天下の騒ぎになろうも知れない形勢だったのです。 江戸の街はまだ屠蘇機嫌で、妙にソワソワした正月の四日、平次は回礼も一段落になった安らかな心持を、そのまま陽溜りに持って来て、ガラッ八の八五郎を相手に無駄話をしていると、お静に取次がせて、若い男の追っ立てられるような上ずった声が表の方から聞えてきます。 …
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 江戸川 乱歩:自作解説 怪人二十面相と少年探偵団

    2018-05-15公開  入力:sogo, 校正:きゅうり  (5k/11k)  “表題の私の少年探偵小説について何か書くように勧められたが、私は三、四年来、病気でひきこもっていて、手足が不自由なため、筆が執れないので、手紙の返事などは、家族のものに代筆してもらっているような、ありさまである。以下の文章は拙著「探偵小説四十年」(千部限定、昭和三十六年、桃源社)の昭和十一年の章に「初めての少年もの」という見出しで書いたものがあるので、それに原稿紙三、四枚新らしく書き加えて責めをふさぐ…”…
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 斎藤 茂吉:紙幣鶴

    2018-05-14公開  入力:秋谷春恵, 校正:高瀬竜一  (2k/5k)  “ある晩カフェに行くと、一隅の卓に倚ったひとりの娘が、墺太利の千円紙幣でしきりに鶴を折っている。ひとりの娘というても、僕は二度三度その娘と話したことがあった。僕の友と一しょに夕餐をしたこともあった。世の人々は、この娘の素性などをいろいろ穿鑿せぬ方が賢いとおもう。娘の前を通りしなに、僕はちょっと娘と会話をした。 「こんばんは。何している」 「こんばんは。どうです、旨いでしょう」 「なんだ千円札じゃないか…”…
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 斎藤 茂吉:玉菜ぐるま

    2018-05-14公開  入力:秋谷春恵, 校正:高瀬竜一  (3k/7k)  “欧羅巴には、骨骼の逞しい、実に大きな馬がいる。僕は仏蘭西に上陸するや、直ぐその大きな馬に気づいた。この馬は、欧羅巴の至るところで働いている。その骨組が巌丈で、大きな図体は、駈競をする馬などと相対せしめるなら、その心持が勿体ないほど違うのであった。 僕はいまだ童子で、生れた家の庭隈でひとり遊んでいると、「茂吉、じょうめが通るから、ちょっと来てみろまず」母はこんなことをいって僕を呼んだものである。なるほ…”…
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
follow us in feedly

ページ上部へ戻る